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【個人情報流出を防ぐ】API/SSO連携のセキュリティリスクと個人で講じるべき対策

Tags: API連携, SSO, セキュリティリスク, 個人情報保護, 予防策

はじめに

私たちは日々のデジタルライフで、様々なWebサービスやアプリケーションを利用しています。これらの多くは、他のサービスとの「連携」や「単一認証(SSO: Single Sign-On)」の機能を提供しており、非常に便利に利用できます。例えば、「Googleアカウントで他のサービスにログインする」「あるアプリからSNSに投稿する」といった操作は、API連携やSSOの代表的な例です。

しかし、この便利な連携機能の裏側には、個人情報流出のリスクが潜んでいます。特に多くのオンラインサービスを利用する中で、どこかの連携先から情報が漏洩する可能性はゼロではありません。ITリテラシーが高いエンジニアの方々も、ご自身の情報がどのようにやり取りされ、どのようなリスクがあるのかを体系的に理解し、適切な対策を講じることが重要です。

本記事では、API連携やSSOが個人情報とどのように関わっているのか、どのようなセキュリティリスクがあるのかを解説し、万が一の事態に備えて個人でできる具体的な予防策や対応についてご紹介します。

API連携・SSOの仕組みと個人情報との関わり

API連携とは

API(Application Programming Interface)連携とは、異なるソフトウェアやサービス同士が互いに情報や機能をやり取りするための窓口(インターフェース)を介して連携することです。これにより、ユーザーは一つのサービス上で、他のサービスの機能を利用したり、データを受け取ったりすることができます。

例えば、天気予報アプリが気象庁の公開APIを利用して最新の天気情報を取得したり、旅行予約サイトが航空会社のAPIを利用して空席状況を表示したりするケースがあります。Webサービスにおいて、ユーザーの同意のもと、あるサービスが別のサービスからプロフィール情報や投稿情報を取得するといった形で個人情報が連携されることも一般的です。

SSO(Single Sign-On)とは

SSOは、一度の認証(ログイン)で、複数の異なるサービスにアクセスできるようになる仕組みです。GoogleやFacebook、Appleなどのアカウントを使って様々なWebサービスにログインできる機能が代表的なSSOの実装です。

ユーザーはサービスごとにIDとパスワードを管理する必要がなくなり、利便性が向上します。SSOの仕組みの背後では、OAuthやOpenID Connectといった標準的なプロトコルが利用され、認証情報(ログインしているか)やユーザー情報が、ユーザーの同意に基づいて連携先のサービスに安全に(プロトコルの設計上は)伝達されます。

個人情報との関わり

API連携やSSOは、ユーザーの利便性を高めるために、ユーザーの同意に基づいて個人情報をサービス間でやり取りします。これには、氏名、メールアドレス、プロフィール画像、フレンドリスト、投稿内容、決済情報などが含まれる場合があります。

連携やSSOを設定する際には、「〇〇(連携元サービス)があなたの以下の情報にアクセスすることを許可しますか?」といった形で、連携される情報やアクセス権限(アクセススコープと呼ばれます)の確認画面が表示されることが一般的です。この画面でユーザーが許可を与えることで、情報の連携が開始されます。個人情報保護法においても、個人情報を第三者に提供する場合には、原則として本人の同意が必要とされています。API連携やSSOにおける同意画面は、この同意を得るための一つの手段と言えます。

API連携・SSO利用時に潜む個人情報流出リスク

API連携やSSO自体は便利な仕組みですが、その利用方法や連携先のセキュリティ対策に問題がある場合、個人情報流出のリスクが発生します。

  1. 連携元・連携先サービスの脆弱性: 連携しているどちらかのサービスにセキュリティ上の欠陥(脆弱性)がある場合、そこから個人情報が漏洩する可能性があります。たとえ自身が利用しているサービスが堅牢でも、連携先が脆弱であればリスクは高まります。
  2. アクセス権限の過剰付与: 連携時に要求されるアクセス権限(アクセススコープ)をよく確認せず、必要以上に広範な権限を与えてしまうと、本来連携されるべきでない情報まで連携されたり、悪用されるリスクが高まります。例えば、単にログインするだけなのに「フレンドリストへの書き込み」や「決済情報へのアクセス」を求められていないか?といった点に注意が必要です。
  3. 認証情報の不適切な管理: SSOで利用される認証情報や、API連携で利用されるアクセストークン(連携を許可された証拠のようなもの)が、連携元や連携先サービス内部で不適切に管理・保管されている場合、それらが漏洩し、不正に利用される可能性があります。特に有効期限の長いリフレッシュトークンなどが漏洩すると、継続的な情報アクセスを許してしまうリスクがあります。
  4. 悪意のある第三者によるAPIの不正利用: 連携元サービスが提供するAPIに不備がある場合、正規の連携ではない第三者によって不正にAPIが利用され、個人情報が抜き取られるといったリスクも理論上は考えられます。
  5. 同意なく情報が連携されるケース: 悪質なサービスの中には、ユーザーの同意を適切に得ずに情報連携を行ったり、分かりにくい表示で同意を誘導したりする可能性があります。

個人でできる具体的な予防・対策

API連携やSSOに伴う個人情報流出リスクを低減するために、個人レベルで以下の対策を講じることが重要です。

1. 連携許可時の確認を徹底する

新しいサービスでAPI連携やSSOを利用する際に表示される許可画面は、必ず内容を詳細に確認しましょう。

2. 既存の連携設定を定期的に見直す

一度連携を許可すると、その設定は残り続けます。利用しなくなったサービスとの連携や、過去に安易に許可してしまった連携設定を定期的に見直し、不要なものは解除することが非常に重要です。

連携設定の見直し・解除チェックリスト

3. サービスの選定基準にセキュリティを加える

新たに利用するサービスを選ぶ際には、機能や利便性だけでなく、セキュリティ対策がしっかりと行われているかも判断基準に含めましょう。

4. パスワード管理を徹底する

SSOを利用している場合でも、連携元となるサービス(Googleアカウントなど)のパスワードが非常に重要になります。このパスワードが漏洩すると、それに紐づく全ての連携先サービスに不正アクセスされるリスクが高まります。

万が一、連携サービスから個人情報が流出した場合の対応

連携しているいずれかのサービスから個人情報が流出したことが判明した場合、迅速な対応が必要です。

  1. 流出元サービスからの通知を確認する: どのような情報が、どのように流出したのか、サービス側が推奨する対応は何かを正確に把握します。
  2. 連携元のパスワードを変更する: 流出元が連携先サービスであったとしても、念のため、SSOの認証元となっているサービスのパスワードを変更することをお勧めします。
  3. 連携先サービスでの影響を確認し、パスワードを変更する: 流出元サービスと同じ、あるいは類似のパスワードを他のサービスでも利用している場合は、直ちにそれらのパスワードも変更します。
  4. 当該連携を解除する: 設定画面から、リスクのある連携サービスとの連携を直ちに解除します。
  5. 他のサービスへの影響を確認する: 流出した情報(メールアドレス、電話番号など)を他のサービスでもIDとして利用している場合、それらのサービスで不正ログインがないか確認し、警戒を強めます。
  6. 二次被害への警戒: 流出した情報が悪用されないか、フィッシングメールや不審な連絡がないか注意深く監視します。

個人情報流出後の一般的な対応フローについては、当サイトの他の記事もご参照ください。

まとめ

API連携やSSOは、私たちのデジタルライフをより便利に、より効率的にしてくれる強力なツールです。しかし、その利便性と引き換えに、個人情報流出のリスクも存在します。

ITリテラシーの高いエンジニアの方々であれば、これらの仕組みの背後にある技術的な側面を理解しやすいはずです。その知識を活かし、連携許可時に要求されるアクセス権限を慎重に確認する、利用していない連携を定期的に見直して解除するといった、能動的な対策を講じることが、ご自身の個人情報を守る上で非常に重要です。

便利な技術を安全に活用するために、日頃からご自身の情報がどのように流通・利用されているのかを意識し、適切なセキュリティ対策を習慣づけましょう。